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2017年2月22日水曜日

東海道を歩く (9)蒲原~府中(駿府)    大坪正和

 
蒲原~興津
夏の暑さに負けて蒲原で長逗留を決め込み、とうとう秋になってしまった。そろそろまた歩き出さなければと思い立ち、薩(さった)峠を越えることにした。
 蒲原宿は、広重の「雪の蒲原」として知られているのだが、実際には現在、静岡県で雪が降るのは何年かに1回で、積もることなどまずない。これも気候変動の影響か。
 蒲原から由比は古い家並が残り、旧街道の情緒が味わえる。
 由比宿には広重美術館、由比正雪生家などが残り、平日でも観光客がそぞろ歩くところだ。
 それにサクラエビ。
 は、山の中腹を抜けて行く。見返れば駿河湾越しに富士が見える絶景。よく台風情報に登場する東名高速が海上を走る所を真下に見ることができる。
 静岡県に居住していても、富士山が見えるのは年間の3分の1程度。峠から富士山が見えるのは賭けに等しい。かろうじて見えますか?


興津~府中(駿府)
 
  秋は足ばやに過ぎ去り、冬は冬眠の季節。東海道歩きはとうとう2年目の春になってしまった。「地元はいつでも行ける」などと高をくくっていたのが大間違い。その気になるまで時間がかかりすぎた。

興津からは追分宿(清水)を通って府中(駿府)に行く。この区間、都市化が進みほとんど旧街道の面影を見ることはできない。よく知った所だと馬鹿にしていたが、実際歩いてみると、思ってもみなかったところを旧街道が通っていたことに驚かされる。
街道沿いには、こんなものも。西園寺公望の別荘「坐漁荘」
 
徳川家康幼少時代の学問所「清見寺」。門と境内の間をJRが通る不思議な光景。

府中名物「追分羊羹」今でも人気の店。
JRを何回か渡るあたり。というか、東海道上をJRが通っている。
次第に静岡繁華街が近づいている。

(つづく)

2017年2月12日日曜日

朱雀大路の上にある京都鉄道博物館




 企画展の終了が近いという情報をJR駅のポスターで見ました。オープン以来、いっぺん行ってみたいと思いながら、何しろ人の多いところが苦手な私なので、これまで行けずにいました。 この機会にと1月の下旬、梅小路を目指したのでした。


 ここは梅小路蒸気機関車館の時代に一度行ったことがあります。
 埼玉にも、名古屋にも鉄道に関係する博物館がありますが、ここ京都鉄道博物館のよいところは、まず周辺のロケーション。東海道新幹線、東海道線、山陰線の列車が近くを走り、「ほんまもん」の列車が見られること。博物館から見ると東に京都タワー、南には新幹線の向こうに東寺の五重塔が見えて、ほかのどこでもない「京都」を印象付けます。
 京都駅からのアプローチもなかなかによい。京都駅から西へ歩いていけば、ほどなく梅小路公園。この公園の北側を歩けば京都水族館、南側を歩けば、JR線のすぐ隣。さらにSLスチーム号が蒸気を吐きながら(SLですから当然ですが)、目の前を走っていく。入館料を払う前から大サービスの様相。そんな中を歩いて博物館に到着します。
  展示車両の多さも魅力です。大阪(交通科学博物館)から引っ越してきた車両に、もともとの梅小路(蒸気機関車館)の蒸気機関車が加わるわけですから、埼玉や名古屋に負けようはずがありません。話題だったトワイライトエキスプレスも展示されていますし、「生きている」蒸気機関車が何両もあるという贅沢。内部をもっと見せてほしいなと思う車両もあって、気を惹きます。
 2階のレストランからの新幹線や在来線、SLスチーム号が走るのを眺められるのもいいです。幸いに南側の窓際の席に座れました。味はともかく、よそには見られないメニューばかりで、いっぺんくらいは見ておく値打ちがあるというもの。
 3階のスカイテラスも魅力的です。気候のいい頃に、お弁当を持ち込んで過ごしたいと思う優雅なスペース。

 京都鉄道博物館は朱雀大路の上に建っているそうです。ということは、この真南には羅城門があったということですね。平安時代には朱雀大路をたくさんの人たちが往来したことでしょう。平成の今は山陰本線の列車がほぼ朱雀大路の上を北向きに高架で走っています。
 やはり人々にとって鉄道って人生なんだと思います。展示されている車両のほとんどは「昔」走っていた車両です。老夫婦が昔、その列車に乗った思い出を語っていたり、昔はこんなだったんだと子どもや孫に話していたり。決してここは、子どものためだけのテーマパークではありません。子どももカップルも親子連れも、孫連れも、そして老夫婦もやってくるマルチな博物館です。
 そして何よりジオラマ。上演時間が近づくと館内から人が集まってくること。動くものが好きなのは子どもだけではありませんね。ジオラマの「くすぐり」は名古屋のほうが上かな?
 日が傾きかけたころにSLひろばに出ます。蒸気機関車ってどうして、あんなに夕日が似合うのでしょう。過去の勇者だからでしょうか。SLスチーム号として1日の勤めを終えたC622号機が転車台に乗って線路を替え、石炭の燃えカスを掃除するのだそうです。
 大人の入館料が1200円。映画一本観るより安く楽しめます。大阪時代から、あるいは蒸気機関車館時代から入館料が高くなったと思っていましたが、1日遊べるなら安いものです。
 見るものがたくさんありすぎて、肝心の企画展はほとんど素通りで終わってしまいました。

(hill)