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2021年1月25日月曜日

滝川幸司 著 『菅原道真 学者政治家の栄光と没落』 中公新書

 

  先日、NHKの『歴史秘話ヒストリア』で、「1000年愛され続けた天神様 菅原道真」を観ました。番組の内容を、NHKのフェイスブックから引用すると…

学問の神様・天神様として知られる菅原道真。平安時代に活躍した貴族だ。政争に敗れ、大宰府に流され、非業の死を遂げた道真。その後、都では怪事件や天変地異が巻き起こる。当時の人たちは、これを道真の怨霊の仕業と恐れおののいた。しかし、いつしか道真は、天神様としてまつられるようになる。なぜ、怨霊は神になったのか? 理由を探るため、道真ゆかりの地を調査。1000年愛される続ける天神様誕生の物語をご紹介する。

番組を頭の中で整理してみると、

  • 幼少のころから学問に秀でており、11歳で初めて漢文を詠んだこと。
  • その後も、学者、政治家として才能を発揮し順調に昇進を重ねること。
  • 讃岐国司として赴いても、人々の悲惨な暮らし見つめそれを都に報告したこと。
  • 阿衡事件や遣唐使派遣再検討についても自らの立場よりも大局にたった意見をしたこと。
  • 藤原氏との諍いを避けるため右大臣の辞職を天皇に願い出たが受け入れられず、結果的に左遷され太宰権帥に落とされたこと。
  • 大宰府では質素な暮らしをし人々から慕われていたこと。
  • その後、天神様として人々の信仰の対象になったこと。

 私の記憶ですから、いいかげんなところもあると思いますが、だいたいこんな番組の流れだったと記憶します。

 

ヒストリアの道真の回にコメントをしていらっしゃったのが大阪大学の滝川幸司先生。現在は大阪大学で研究をされていますが、かつては私たちの奈良大学の先生でした。

 滝川先生のご本を最近読みました。本当を言うと、先にご本を読んだので番組を見てみようという気持ちになったのです。

中公新書の『菅原道真 学者政治家の栄光と没落』です。平安時代に漢詩を数多く残している道真を、彼の漢詩を読み解くことで捉えなおそうというのが

 滝川先生のこの一冊です。「はじめに」の中で、滝川先生はこんなふうに書かれています。

それぞれの時期の心情がこれほどまでに残り、自分彼の手で編纂した史料が現存している官僚は、平安時代には他にいない。それが右大臣のまで至り、地方赴任すら経験しているのである。

 私たち国語教員は、まず漢文にふれる時間がそんなに十分にあるはずがなく、日本人の漢文にふれる時間はさらに少ない。道真といえば、天神さんか、飛梅の歌くらいしか知らないのですが、滝川先生のこの一冊でこれまで知らなかった道真について教えてもらうことになりました。

 並々ならぬ才能があったことのみならず時の天皇に重宝され、それが度を過ぎていたことも道真の不幸だったようです。

 

(hill)

2021年1月1日金曜日

あけましておめでとうございます

 新年あけましておめでとうございます。奈良大学国語教育研究会、4代目の会長を仰せつかりました大呂広志です。

昨年度終わりごろからコロナ禍により、いつもとは違う学校現場になっています。普段通りにはできなかったことがたくさんある中で、普段にはない発見や、普段ならできなかったことができたということも多少はあったこの1年ではなかったでしょうか。

私たちの研究会も昨年25回目を数える年ではありましたが、コロナ禍により一堂に会しての研究会は開けませんでした。その代わり、のべ28名の方々から原稿を寄せていただき、冊子としての研究会を開くことができました。実験的にではありますが、これまでにはなかった新しい研究会の形を試すことができました。

そして今年の夏、26回目の研究会はハイブリッドでの開催をできたらと準備を始めました。いつものように奈良大学を会場として研究会を行いますが、遠方の方にはオンラインでも参加していただけるという意味でのハイブリッドです。開催日は8月7日(土)。どうぞ、多くのみなさんのご参加をお待ちしています。

少しでも早いコロナ禍の終息を願って、新年のご挨拶とします。

大呂広志