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2016年8月15日月曜日

第21回奈良大学国語教育研究会報告(1)



《日時・場所》
       ◇  201686日(土)13:00から
                     奈良大学 A4階 中会議室

《内容》   開会の挨拶 会長 岡部秀樹


       記念講演
        「『摂津名所図会』の世界」
          中尾 和昇 先生(専攻 近世文学)


      
教育実践交流
        「大自然に囲まれた小さな村の小中学校から」
             神野 寛 さん
        「長い文章を読み通す力を」
             池田 貴之 さん

      
ワークショップ「教育とは○○である!」
          司会進行 大呂 広志(当研究会事務局長)

  中尾和昇先生の講演。江戸時代初期から旅の案内書はあったが、「都名所図会」が大ヒットしたことで、あちらこちらで名所図会シリーズが多数発行されるようになった。そのテーマは寺社や旧跡、年中行事にとどまらず、風俗や産業も芸能や娯楽など幅広いもので、名所(もともとは「などころ」と読み、歌枕と同じ意 味であった)といっても、流行をしていた、庶民にも魅力的なものを取り上げ、絵と文章があいまって、旅の気分を味わえるものであった。文章を担当するのは一人の作家で、絵師は複数いるというケースもあった。名所図会を購入することができるのはそれなりに財力のある層であった。彼らは図会をもって旅に出かけ たというよりも、机上で旅の気分を楽しんだ。
 だいたいそんな内容だったと思います。「図会」を現代にたとえるなら、旅行に携行できるような、「るるぶ」のような旅行ガイドではなく、休日に新聞折込などで広告が入る、ユーキャンのDVDみたいなものだったのではないかと思いました。



  教育実践交流、神野さんの発表。中尾先生の講演で旅の気分を味わった後は、教職員数が児童生徒数を1名上回るという小さな小中学校に勤務する神野さんのお話しでした。まずは、学校にある村の紹介。タイトルにあるように自然いっぱいの伸びやかな環境が画面からも伝わってきて、一度国語教育研究会をこの村で 開いてみたいという感想を持ちました。講演と、この発表をつなぐとすれば「旅気分」。
 もともと中学校で勤務していた神野さんがこの学校に転勤して、小学生の国語の授業を担当することになりました。そこで児童とじっくり向き合うなかで、この子に自信をつけさせてやりたいという思いが出てきたそうです。 「自分で書けた」と思わせるまでの実践が発表されました。地元新聞への俳句の投稿、詩集への投稿など、粘り強い指導がうかがえました。


  教育実践交流の二人目。池田さんの発表は3年前の実践交流の発表、「読解力と表現力育成を目指して」を受けてのものでした。3年間指導した結果をまとめ、 分析されたものです。池田さんの勤務する高校は転勤が少なく、指導者も3年間持ち上がりになることが多いのだそうです。教科指導においてもその年次の3年間通しての計画が立てられる。勉強面での集中力が続かない、長い文章の読解が苦手に生徒が多い現状で、3年間の現代文分野の教材にボリュームのあるものを選び、2単位ながら読み通すことを通して、その学年の生徒の意識がどう変わっていったかという興味深い発表でした。
 実践交流発表一人目の神野さんとの共通点を探せば、「苦手意識をどう変えてやれるか」ということになるでしょうか。

  ワークショップのこのスタイルは、3年目になります。参加者全員が「お題」に対して自分なりの回答をスケッチブックに書き、その理由を簡単に説明していく というスタイルです。1年目は「あなたにとって『国語』とは?」、昨年は「国語授業の楽しみ」について、参加者それぞれの思うところを述べ合うというものでした。回答はいろいろあっていいのです。いろいろあったほうが楽しい。今年のお題は、「教育とは○○である!」○○の部分を答えなさいというものでした。
 ところが、教育実践交流の盛り上がりで、時間が予定の半分くらいしか残っていません。進行役の事務局長はスケッチブックを省略して、それぞれの思いを述べていくことに変更してスタートしました。このテンポの良さが心地よかった。各参加者から出された○○は次の通りです。
 裏切 りに耐えること/まつこと/愛しいと思うこと/忍耐/企業の礎/鏡/互助/種まき/発達を保障する/(こちらが)気づくこと/生きるすべ/向き合うこと/ 理解すること/誰もが学べる場/ともに学ぶこと/向かい合うこと/目標を決めること/新しい経験、発見をすること/継続すること/目標をもつこと/愛すること/教育しないこと/世界を共有すること/幸せになるためのもの/
 どうです?「教育とは○○である」奥が深いでしょう。
 
hill

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