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2016年11月29日火曜日

夢の国





 吉城園の帰り、ちょっと遠回りをして、奈良ドリームランドの跡地を見てきました。

 2006年に閉園しましたが、私の勤務している学校からは今でも、ボブスレーのあったお山が見えます。世の中にはいろいろなマニアが存在していて、廃墟マニアという人たちがいるそうです。その廃墟マニアが閉園後の奈良ドリームランドにちょいちょい侵入して困るというような記事を見たことがあります。今はどうなっているのでしょう。
 佐保ゴルフセンターの横から敷地内を走る道路に入ってみました。遊園地と駐車場や入場ゲートの間を公道が走っているのです。その道路から中の様子が伺えます。休日だというのに大きなトラックが出てきます。そして見えたのが、木製コースターASKA。それも取り壊しの最中でした。閉園から10年。やっと撤去工事に入ったわけですね。
 道端でバイクを下りて煙草を吸っているおじさんがいたので、話しかけてみました。木製コースターの撤去はもう一月くらい前からやっているそうです。大きなはずの油圧ショベル(よくユンボなんて言われている)がおもちゃのように見えるのですからコースターはとても大きい。その大きなコースターを下から取り壊しているわけですが、おじさんは油圧ショベルがコースターの下敷きにならないか心配の様子です。また、この奈良ドリームランド跡地が火葬場になるという話もあったけれど、地元の反対で立ち消えになったとか…たばこ一本の間にいろんなことを教えてくれました。では写真を撮ろうと、金網に近づいて下半身をもぎ取られたコースターを見上げると、立ったまま死を迎えた恐竜のようにも見える。
 煙草を吸い終わったおじさんを見送り、さらに観察してみると、コースターだけでなく、園内ではあちらこちらで遊具や建物の撤去作業が行われているようです。私の職場から見えるお山も麓の鉄骨が露出して、歯槽膿漏の歯のように寂しい。お城はまだ取り壊し前のようにも見えます。

 学生時代にもときどき遊びに来ました。夏には週末に花火が上がったというような記憶もあります。最後に来たのはいつだったでしょう。ウルトラマンのショーをやっていたころ、子どもを連れてきたのが最後か。それともメーデーの会場になっていて、やってきたのが最後だったか。思い出せません。

 少し移動すると外周列車の駅。駅名は「夢の国」なのですが、その国へ行くにも線路がはがされて、枕木が草ぼうぼうのプラットホームに積み上げられている。駅舎の窓ガラスは割れ、時計は718分で止まっています。園内を覗くと、中央噴水の階段はまだ面影を残しています。モノレールの軌道はまだ一部がありました。でも園内に人影は見えず、何台かの油圧ショベルが動いているだけ。東側を見下ろすと、かつて広大な駐車場やボウリング場、そしてドリームホテルがありましたが、こちらも廃墟の様子です。

 もう少し、南へ走っていくと、従業員の出入り口だったところでしょうか。ゲートがありました。郵便受けからあふれているのは、行政書士会と書かれた封筒。ゲートわきの柿の木が、青空を背景に実をつけているのが、寂しさを増幅させます。
 かつて、映画007にも登場した夢の国は、今は夢の跡になっています。


(hill)

2016年11月27日日曜日

吉城園



  世の中のほとんどの人は、紅葉を愛でるためにだけ日々生活をしているわけではありませんから、一番きれいな時に眺められるというのは相当の偶然が重なっているはずです。紅葉の具合だけでなく、天気も紅葉の美しさを左右するはず。今年は、紅葉のころになって曇りや雨の日が多かったように思います。
おそらくこのブログの中でも紅葉では最多登場を果たしているであろう、奈良市の吉城園。依水園・寧楽美術館の隣にあります。訪問したのは26日でしたが、23日の早朝、仕事で近くに来たものですから、まだ開園前に外から覗いてみたのでした。やはり色がよくない。それに入り口近くの楓の葉を眺めると、1枚の葉の中に青いところと紅葉したところが混じっていて、この色のミックスが木全体を濁った色に見せているように思いました。

26日。バイクで吉城園まで走り、開園時刻を待っていました。入園料を払ってスタッフのお姉さんに、「今年の紅葉ももう一つですね」というと、意外にも帰ってきた言葉は、「そうではないのです。今年はちょうど綺麗な期間が短かったのです。でも、今は落ち葉がきれいですよ。」と教えてくれました。なるほど、紅葉が始まったころに冷え込むと、きれいな期間は短くなりますね。
さて、朝日が差し、少しずつ目覚めていく様子の吉城園。庭の手入れをするおじさんが、掃除機の反対の働き(ホースから空気を送り出す)をする機械で、通路の落ち葉を蹴散らしています。やはり何年か前に見た、これでもかというようなゴージャスな紅葉ではありません。ほとんど葉を落としてしまった木、葉がチリチリと枯れたような木、それにまだ青々としていて、いつになったら葉を落とすのだろうと思えるような木。

何度も何度もこの吉城園には入っているのに、今回初めて気づいたことがあります。それは、東大寺大仏殿の鴟尾が見えるところが、園内に2か所あるということ。もちろん、木々が葉を落とす冬場しか無理だと思いますが、これまで気づかなかったのはなぜでしょうね。

 私は開園2番目の入場者でしたが、後から後からどんどん入場者が入ってきて、もちろん、高桐院のようなことはありませんが、紅葉はともかくも人の入りは十分です。


 (hill)