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2020年2月12日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (21)


711028 棚橋正人
 
 巡礼者用ポスター   
620日(火) サンティリャーナ・デル・マル(Santillana del Mar)~ オレナ(Orena)  


なんとか起きて歩き出す。観光地の朝は納品の車がいっぱい停車している。中世の石畳が美しい。人が少ないぶん村には昔のたたずまいがもどっている。

古い都、奈良も朝がいい。昼間はあまりに人が多すぎる。ゴミも落ちていて騒がしくて1300年昔を思い出すのは不可能に近い。奈良に原始林があるのをご存じだろうか。春日山がそれで、県庁からすぐのところに深い深い森がある。
学生のころ、かわたれどきの奈良公園を散歩していたら地響きが聞こえてきた。音の方を見ると霧の中から鹿の大群がこちらに向かって疾走して来る。思わず木の陰に身を隠した。奴らは獣の目をしていた。昼間、人間に鹿せんべいをねだってペコペコ頭を下げているのはどうやら仮の姿みたいなのだ。その奴らの野生のバックボーンは背後の原始林にあると思うのだが、どうだろう。

万城目学『鹿男あをによし』の鹿は言葉をしゃべった。人間との付き合いの長い奈良の鹿ならあり得る話だと思う。筆者は岩手の曲り屋に泊めてもらったとき、釣りにいった小川の近くでカラスから「おはよう」と声をかけられた。宿の方に話すと「そんな烏の話は聞いたことがない」と言われたが、これは本当の話なのですよ!

さて、体調不良のスペインにもどろう。観光客はみなホテルで朝食をとるからカフェはまだ閉まっている。食欲もないのでバルにも入らず村を通り抜ける。
しばらく牧場の中を歩いていくといい具合に店があった。テラスで小さい子を連れた若夫婦が朝食をとっている。何か食べなくてはと思い、カフェオレと甘いパンを注文する。小さい兄弟の下の方の機嫌が悪い。泣くはごねるは、お母さんはたいへんだ。そのうち店の犬までがつられてキャンキャン吠えたてる。にぎやかだがのどかな朝だ。いい天気でほっとするがアルタミラの博物館を見学するだけの体力はない。
草原の向こうに小さな村が見える。丘の上にポツンと教会がある。これはジブリの世界だ。「ゲド戦記」の草原の風に吹かれている気がしてきた。
だが、この主人公は呪いにでもかかったように気持ちが悪い。頭も痛くなってきて道端に座り込む。少し休めば回復するのだが体力が全く続かない。

Orenaの集落に入ってすぐのところで私営の小さいアルベルゲを見つけた。
時間はまだ昼前だが、やはり体調が悪い。この日差しの中とても歩けそうになかった。ドアを開けると人の気配がする。出てきたオスピタレロに早いが泊まらせてくれと頼んでベッドに転がり込む。ぐっすり眠るともう夕方になっていた。
シャワーを浴びてお茶を飲んでいると女性の巡礼が一人入ってきた。この日の客は二人だけだった。とてもつつましいおとなしい方で話を聞いてみたかったがとてもその気力がなかった。またベッドへ。不思議にいくらでも寝られる。この3日ほどまともに食事ができていない。これはまずいな…。どうするか?

まぁ!明日起きてから考えることにしよう。


さて、明日からの遍路の運命やいかに?

「北の道」の巡礼は、はたして続けられるのでしょうか?

ハポンペレグリーノ!絶体絶命のピンチ!

来週をお楽しみに!                  To be continued

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