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2020年2月5日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (20)



711028 棚橋正人



619日(月) サンタンデール(Santander) ~ サンティリャーナ・デル・マル(Santillana del Mar)  
 大きな町は鬼門だ。また迷っている。やっと広い2本の道路の真ん中がグリーンベルトになっている通りに出た。これを行けば郊外に出られる。感じでいうと札幌の「大通り公園」、名古屋でいうと栄のテレビ塔のある久屋大通りに似ている。公園もベンチもあって、歩いていて気持ちがいい。それに日差しが強くなってきたので、大きな街路樹の木陰は弱り気味の遍路にはありがたい。
 4時間ほど歩いたところで駅が見えてきた。計画どおりPielagosから電車に乗る。巡礼者らしき人も何人か乗っている。車窓からはずっと牧場が続いているのが見える。
 昼前の電車はすいていた。4駅向こうのRequejadaで降りる。乗車時間は15分ほどだがこれで20キロほど距離を稼げた。

 降りた町は工場地帯で、火力発電所らしき建物が見える。工場地帯を抜けてほっとしたところにちょうどバルがあった。ここで一休み。暑かったので冷たいコーラを飲んだ。客は僕一人だったのでお店のおばさんと少し話をした。支払いをしようとすると彼女が「いいよ」とおっしゃる。こんなところで「お接待」を受けるとは思ってもみなかった。せっかくなのでご好意に甘えさせてもらう。ここで一句

夏空に いずこも同じ おせったい

めざすサンティリャーナ・デル・マルは丘の上にある村だ。ここには世界遺産の「アルタミラ洞窟」がある。僕が中学の社会科で習ったのは人類最古の壁画で、野牛のオレンジ色の絵だった。これは1万数千年前のものだが、最近の発見では同じ北スペインでホモ・サピエンス以前のネアンデルタール人の洞窟壁画が見つかったそうだ。こちらは6万年前というからすごい。

丘をあがったところで吐き気がしてしばらく休憩。あいかわらず胃の調子が悪い。なんとか歩き出してやっと村に着いた。今夜はここのアルベルゲに泊る。
 村の通りには時代を感じさせる中世の建物が並んでいる。この村はサンタ・フリアナ修道院の周りにできた集落で、いわゆる門前町だ。14世紀から18世紀の古い町並みで有名なところ。ここはまさしく観光地だった。なんでも「スペインで一番美しい村」に選ばれたことがあるらしい。アルタミラの博物館もあるし、車で20分走ったコミージャスの村にはガウディーの可愛い「ひまわりハウス」もある。見どころ満載なのだ。村の中を歩くと趣味のいい土産物屋が何軒もあった。ウインドウを覗いてみるが値段が高い。レストランも高級そうで、よれよれのお遍路さんがふらっと入れる雰囲気ではなかった。バルのテラスで飲んでいる観光客もお金持ちのにおいがした。ぐるっと村を歩いたが気おくれがして、けっきょく何も食べずに帰ってきた。なさけない!食欲もないし水分だけとって寝てしまおう。やれやれ、元気ならばたぶん村の印象はずいぶん違うのだろうな…。本物は見られないまでもせめてアルタミラ博物館には入っておけばよかった。次回があればぜひ行ってみたいものだ。

さて、お腹がすいたが、このまま寝てしまおう。明日になればなんとかなるさ!

 夜に娘の夢を見た。一番下の佳那ちゃん。保育所にお迎えに行かなければならないのにバギーがない!どうしよう?抱っこすればいいか。車で行くのになぜか免許証がないけど、いいか!っていう夢。

かなちゃんは先に天国に行ってしまった。もう11年になる。重度脳性麻痺の障害があった。身体が弱くて、でも、がんばってがんばって18歳まで生きた。スペイン巡礼に出かけたのも彼女が亡くなって、心にポッカリ空いた穴がふさがらず、四国のお遍路を始めたのがきっかけだった。
巡礼をしているとふと、かなちゃんが舞い降りてくることがある。道端のなんでもない花の姿で。あるときはずっとついてくる蝶々になって。
今回もまた、かなちゃんがいっしょに歩いてくれている。
なんかうれしいな。

(つづく)

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