日時 2022年8月6日(土)13:00~17:30
場所 奈良大学 C205教室
奈良大学を卒業し、教員になった人たちの研究会…ということになっているのですが、この研究会は、幅広くいろいろな人たちが集まってくれる研究会です。大学の国文学科の先生、学生さん、教員以外の卒業生も集まってくれます。ふと気づくと他大学の出身者もいたりして…その幅の広さが、この研究会の強みだと感じています。
一昨年は誌上開催、昨年はリモートによる開催。今年はやっと、卒業生の大学への入構が許されました。対面参加とリモート参加のハイブリッド研究会に、私たちも初挑戦しました。
1.記念講演
「大学生の方言分布をさぐる-方言の地域差はこれからも存続するか-」
岸江 信介 先生(奈良大学 教授)
2.特別講義
「国語科で、ぜひやってみたいICT活用&絶対にしてはいけないICT活用」
小﨑 誠二 先生(奈良教育大学 准教授)
3.交流会
「今、学校で起こっていること」
コーディネーター 大呂 広志(当研究会会長)
メモと感想
おそらく国文学科の人たちが一度は興味をもつであろう方言。岸江先生のご講演は、その方言についてのお話でした。21世紀に入って、加速度的に方言が消滅する方向にある。果たして、これから方言は存続するかという、絶滅の危機にある動植物の話題のようなスタートでした。方言の中でも新方言と呼ばれるカジュアルな言葉遣い、改まった場では用いられない方言のお話です。私たちが方言といって思い浮かぶ「伝統方言」が年速1kmくらいで伝播していくのに比べ、新方言は20年で全国に行き渡るくらいの「俊足」だということでした。その速度で、たとえばチャリやチャリンコが全国に広がっていく。そんな中で方言は今後も残っていくか?大学生の方言を分析すると、50年後も方言は続いているはずというお話でした。地域差がなくならない限り、方言もなくならないのだそうです。講演タイトルに驚き、お話を聞いてちょっと安心したようなことでした。
いつもなら教育実践交流というコーナーを今回は特別講義に変えて、奈良教育大学の小﨑先生のお話を伺いました。スタートから驚きの連続。多くの講演の場合、スクリーンにスライドが映写されて、手元にスライドの印刷物があって…という形だと思いますが、小﨑先生は、スクリーンにはQRコード。ここから入れば、提示資料は手元のスマホでもタブレットでも見られるので、スクリーンを注視する必要はないとおっしゃる。さらにこの資料は今回の特別講義のために編集されたものではないので、これからも(場所を問わず)見られるし、少しずつアップデートされていく、よければどうぞご覧くださいというわけです。ICTだのGIGAスクールだのと私たち国語科教員に親和性の低い?と思われるものがどんどん押し寄せてくる気がしているのですが、子供たちや世界を取り巻く環境を見せられて、「もうこんな時代ですよ、そんなことを言っていてよいのですか?」と投げかけられた気分です。こうすればいいんだという具体的な方法をいくつもいただいたような気がします。もういちどWeb上の資料をおさらいしながら、夏休み明けの授業を作っていきたいなという気持ちにさせられました。
交流会も新しい切り口のコーナーです。懇親会が実施できないこともあって、より多くの参加者に発言してもらうことを狙った交流会。今回のテーマは「今、学校で起こっていること」。大呂会長が切り盛り役を務めました。参加者それぞれの現場での思いが出てくる、そのうちギターを抱えた参加者が出てきて歌い始める。岸江先生も小﨑先生も最後までお付き合いいただき、充実した午後となりました。
例年なら、研究会のあと大学の展望ラウンジで懇親会へと続くのですが、コロナ禍を受けて今回懇親会は見送りとなりました。2019年を最後に実施できていない懇親会。来年は乾杯ができることを願っています。
(hill)