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2019年12月11日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (12)



711028 棚橋正人
6月11日(日) ゲルニカ (Gernika) ~レザマ (Lezama ) 25km

議事堂の脇を通ってゲルニカの町を出る。今日は272mの峠を一つ超えなければならない。森林地帯に入るとトラックの深い轍があって、おまけにぬかるんでいるので歩きにくい。
  立木にポスターが張ってあって「巡礼者は倒木に注意!」とある。森にエンジン音がしないから、今日は日曜で作業は休みなのだろう。
木の種類はよくわからないが三日月形の落ち葉だけはユーカリだとわかる。成長の速いユーカリは戦後になってからの植林らしい。
スペインは石造りの家が多いが、森林地帯のこのあたりは木材を使った家が多い。それでドイツ軍は家々を焼き尽くす焼夷弾を投下したのだという。

 
  牧場の中の道を進むとフェンスにかんぬきだけの扉がある。立て看板に英語で「CLOSE FERMER」とある。「ここを通ったら、牛が出ていかないようにちゃんと柵を閉めてくれよ」いうことだろう。ということはここから先は私有地なのだ。
峠を下った大きな農家の前にお接待のテーブルが出ていて果物や飲み物が並べてあった。時間はちょうど昼時、食料を持たないで歩いている巡礼者はこれでずいぶん助かる。村の民家の前にも飲み物やスイカの切ったのが並べてあったが、これは無料ではなさそうだ。売り物かもしれないので、手が出しにくい感じだった。このあたりの塩梅がけっこう難しいものだと思う。

 
   少し大きい村ララベツに入る。広場に人が集まってコーラスと演奏が始まっている。横断幕に「80周年1937~2017」とあるのでバスク自治州をお祝いするイベントなのだろう。さっき休んでいる時に話をしたドイツ人の若者がテーブルでおいしそうにビールを飲んでいる。つい横に座ったら、バスクの歌を聞きながら「プロスト!」とドイツ語で乾杯することになってしまった。奴はこの村で泊まるそうだが、ほろ酔いの遍路はもう少し頑張って次の村まで行くことにした。
1時間ほど歩いた、Lezama(レザマ)のアルベルゲは定員が20人だと聞いていたのでビビりながらいくと滑り込みセーフ!最後のベッドを確保した。靴は外で脱いでこいとうるさくいわれた。ぬかるみで濡らした靴を室内に持ち込むと、部屋が温まったころにたいへんなことになるのだろう。
やがて入り口のドアに「ALBERGUE COMPLETO FELL」の紙が貼られた。COMPLETOは満室・満席の意味。あとからきた若いスペイン人のカップルはオスピタレロのおばちゃんになんとか食い下がり、食堂のすみに銀マットを敷いて寝られることになった。よかった、よかった!
顔見知りのドイツ人何人かと近くのレストランに出かける。今夜もお遍路定食を食べる。店の客のほとんどが巡礼の連中だ。
明日はいよいよ大都会ビルバオ。美術館がいいらしい。現代美術が充実しているとか。ガイドブックによれば巨大な金属の蜘蛛が川べりに立っているらしい。
距離は10キロくらい。また観光になるかな。まあ行ってから決めよう。
今夜は二段ベッドの上段。向こうのベッドにドイツ人のイネスがいる。
アルベルゲがずいぶん混みあってきた。巡礼者にも波みたいなものがあって、人々のかたまりと共に移動するとずっとそのサイクルになる。それは出来れば避けたい。すると、この一群をやりすごすには明日、ビルバオで一泊するのが賢明かな…。など考えるうち今日も安らかな眠りに落ちる遍路でありました。

(つづく)

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