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2019年12月4日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (11)


711028 棚橋正人
   6月10日(土) メンダタ(Mendata) ~  ゲルニカ(Gernika


ゲルニカの街までは10キロもないので朝ご飯をゆっくり食べる。
イネスとソニャは先に出発した。「ブエンカミーノ!」(よい巡礼を!)
さて、またどっかで会えるだろう。
牧場をどんどん下っていくと遠くにゲルニカの街が見えてきた。そんなに大きな町ではない。町に入ると家の庭に紫陽花がきれいに咲いていた。
通りに面した体育館から歓声が聞こえてくる。垂れ幕が何本も下がって、何かの大会をやっているらしい。ちょっと覗いていくか。階段を上って2階から入ると女子バスケットボールの試合をやっていた。中学生くらいかな…。今日は土曜日だから公式戦なのかもしれない。

町の中心に入ったのでユースホステルを探す。3階建ての白い建物はすぐ見つかった。満員ではなかったので受付をすませて荷物を預かってもらう。
さて、今日は一日観光だ。ゲルニカをのんびり回ってみよう。
ひさびさに鉄道の踏切を渡る。単線だがここは電車が走っている。
商店街のショーウインドウがみんなけっこうおしゃれなのだ。
やがて広場に出た。まずはバスク議事堂へ。ずいぶん立派な建物で階段状の議場は壁面が絵画でおおわれていており、中央にはでかいシャンデリアがぶら下がっていた。ここがまさにバスクの中心なのだ。

表に出ると広場に市が立っていた。おもちゃから民芸品・革製品やハムやサラミの食料品までいろんな店が並んでいる。今日は土曜日。町はこれからにぎやかになるようだ。おなかが減ってきた。バルに入ってボガディージョ(スペイン風サンドイッチ)でも食べよう。カフェコンレチェ(カフェオレ)もうまかった。

さて、腹ごしらえもできたし、大本命!案内所でもらった地図を頼りにピカソが描いた「ゲルニカ」の複製(タイル絵)がある場所に向かおう。本物は紆余曲折あって現在はマドリッドの「ソフィア王妃芸術センター」に展示されている。
中学校の文化祭でこれの模写を制作して展示したことがあったが、このタイル絵はでかい!本物は3.49m×7.77mだというからこれが原寸大なのだろう。
市庁舎から最後に「ゲルニカ平和博物館」に向かう。ここは有料で3ユーロだ。

19374月。スペイン内戦のとき、この町はドイツ空軍によって爆撃を受け破壊された。反ファシズム陣営の人民戦線政府とフランコ将軍を中心とした右派の反乱軍が戦った。いわゆるスペイン内戦である。そこにドイツのヒトラーとイタリアのムッソリーニが参戦してくる。
ゲルニカにはバスク地方の象徴であるバスク議事堂とゲルニカの木がある。
フランスのジャン=ジャック・ルソーは、「ゲルニカは地上で一番幸せな人々が住んでいる。聖なる木の下の集う農夫たちが自ら治め、その行動はつねに賢明なものであった」と書いた。ゲルニカはバスクの文化伝統の中心地であり自由と独立の象徴だった。
そのゲルニカに1937426日、人類史上初めての都市無差別爆撃が行われる。それまでの空爆は、基地や軍需工場などの軍事施設に限られていたのが、ゲルニカは一般の市民が平和に暮らす町であった。ドイツ軍は大量の爆弾を投下し、焼夷弾で木造の家々を焼き尽くし、機銃掃射で逃げ惑う市民を標的にした。
その事実を知ったピカソが描いた絵があの「ゲルニカ」である。当時、パリにいたピカソの絵が開催中のパリ万国博覧会に展示されたのは6月の末だった。 
そして、反ファシズムの人民戦線軍に加わったアメリカの若者の一人が『海と老人』を書いたあのヘミングウェイだ。歴史は面白い!こんな話をしてくれる社会科の先生がいたらもっと世界史好きが増えると思うのだがどうだろう。
 
ヒトラーは1945年に死んだがフランコは1975年まで生きた。ピカソはフランコが支配するスペインに帰ろうとはせず1973年にフランスで亡くなった。
ETA「バスク祖国と自由」という組織は数々のテロ事件を起こしたが、2017年になって完全武装蜂起を宣言した。歴史は続くのであり、これは知っておくべきことだと思う。

この博物館に来てよかった。おじさんも歴史と平和について少しは考えた。現在も世界で続く市民が暮らす町への無差別な空爆。さらに市民を巻き込む爆弾テロ。人類はゲルニカが受けた悲劇をいつまで繰り返すつもりなのか!
ずいぶん昔に、初めて広島と長崎の資料館を見た時と同じ怒りがふつふつと込み上げてきた。

平和博物館を出ると太陽がまぶしかった。
80年前の炎と瓦礫の光景がなかったかのような美しい街並みがつづく。
頭がボーッとしている。少し休まねば!
一度、宿にもどって熱いシャワーを浴びよう!
ついでに洗濯もいっぱいしよう!
屋上の洗濯物干場は広々として洗濯物が思い切り干せた。これは実に幸せなことだ!
さぁーシエスタ。このお昼寝の心地よさがたまらない。

カミーノに来ると寝つきの良さは天下一品!
よく寝たぞ!もぞもぞ寝袋からいも虫みたいに這いだして晩飯を食べに出かけよう!さっきとは違う広場に人が大勢出ている。家族連れが多い。
今日は土曜日。さあ今夜は飲むぞ!というスペイン人たちの熱気が伝わってくる。

商店街の店先で3人のおじさんたちがドラムとスピーカーを並べ始めた。ベースに、リードギターとサイドギターの4人編成。ブルースのようなロックのような哀愁のある旋律も流れてくる。路上にテーブルを並べているレストランの椅子に座る。ここなら演奏を聞きながら晩飯が食える。ワインでいい気持になって食事もうまかった!ゲルニカの夜はこれからなのだろうが、明日の日曜も歩いて旅をするお遍路さんはもう眠くなってきた。さて、帰って寝るか!

しかし、なんということか!宿に帰ると昼間のバスケット少女隊が大挙してユースのあらゆるスペースを占拠しておった。えーっ!同じ宿だったのか!
まぁ箸をころがしても笑えるお年頃、試合が終わった解放感もあって五月蠅いなんの!しかたないこれもまた旅の1コマ。
消灯時間の後は静かにお願い!
バックに耳栓あったかな?
もうやけくそ明日のこころだー!

(つづく)

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