このブログを検索

2020年3月11日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (25)


711028 棚橋正人
624日(土) ジャネス(Llanes) ~ ピニェレス・デ・プリア(Pineres de Pria)  23㎞ 

昨日、海老蔵の奥さんの麻央ちゃんが亡くなったニュースがフェイスブックに入った。小さい子どもがいるから、さぞつらかったろうな。運命はとても残酷だなぁ…。

今朝はカモメの声で起こされた。太い大きな声で鳴いている。森鷗外の鷗はカモメである。『舞姫』のエリスのモデルになった女性はドイツ人である。だからどうということはないのだが、昨夜見た夢が気になるが思い出せない。

この辺りを歩いている時のメモを見直すと俳句があった。

宿を出て 話しかけられ 細雪

鷗泣きて スペインの朝 起こさるる

歌が鳴る 女港町 かもめ町

かけすとは 烏のことと 知らぬまま

昨夜、町に食事に出かけると、面白い看板があった。高く掲げた瓶から反対の手にもったグラスめがけてワインを注ぎ落すものだ。実際に店の前でウエイターがやっている。なかなか見事な技にみえる。なんかどっかで見たことあるなー。そうそう「相棒」で水谷さんが紅茶をカップにそそぐあの映像とそっくりだ。しかし、注いでいる液体は普通の赤ワインではない。そこで、調べてみた。

飲み物はスペインではシードラ。フランスではシードルと発音する。リンゴのお酒。昔は栗の木の樽で発酵させた。そういえば昨日の道中にリンゴの木がたくさんあった。高いところから泡を立てて注ぎ落したシードラがおいしいのだとか。それを一気に何杯も飲む。アルコール度は6%で軽い。楽しいお酒だ。それをこのあたりでは「アストゥリアスの男はピコス・デ・エウロパというスペイン最大の山脈を見ながら(手元を見ずに)注ぐ」というのがカッコイイのだそうだ。その注ぎ方を「エスカンシアール」といい、そのプロを「エスカンシアドール」と呼ぶ。

レストランでそのシードラをいただいた。合う食べ物はと聞くと「白いんげんとチョリソーの煮込み」だというからそれを食べた。シードラはなんと「自動シードラ注ぎ器」にセットされて出てきた。味は期待したほどでもなかった。私にはどちらかというとリンゴジュースの方があっている。

40日近く歩く旅ともなると、道中でみなさんいろいろな道連れができるわけです。例えば若い女性の一人旅がいて、カミーノ初心者となるとおじさんはいろいろ面倒をみたくなる。四国遍路でも、定年退職したばかりのお金持ちのおじさまが歩いていると、その前をうら若きお姉ちゃんが足を痛めてトボトボ歩いている。話を聞くと訳ありで、あまり路銀も持たずに国を出てきてしまった、今日の宿も決まっていないというから、自分の予約した宿に電話をしてやる。夕食時にお酌なんかしてもらって、おじさんもう上機嫌。あくる日は宿代まで出してあげて道連れになる。
「あの二人連れ、親子ほど年が離れているが、どうもありゃ親子じゃないね!」
そういう遍路を援助遍路と申しまして特に3月、4月によく発生するとかしないとか…。お後がよろしいようで…。

ギブアンドテイクならばそれはそれで良いわけですが、初心者の女性の方も初めは不安でいっぱいですが、3、4日もすると同性の友人も何人かできて周りが見えてくる。すると、おじさんのおせっかいにちょっと食傷気味になってくる。西洋の女性ははっきりNO!とおっしゃいますからいいのですが、日本女性は奥ゆかしい。わたくしの知っている方は付きまとわれるのが嫌さに「一日40㎞以上歩いてかわしてやった!」とおっしゃっていました。なんと健脚なことよ!!

あんなに○○さんと仲良く歩いていたのに、今じゃ彼女は若い子ばかりのグループで楽しそうにはしゃいで生き生きしている。別人みたいですね。それに引き換え○○さんはなんか意気消沈してお気の毒。

老いらくの 恋も破れて これもカミーノ

スペインの土曜日の朝は、みんな昨夜騒ぎすぎて、街中誰も起きてこない。
でも、巡礼者だけは別でホテルの食堂はもうテーブルが埋まっている。

さて、出かけるか!街の出口で我が愛車の旧型日産マーチを発見!なんかうれしい。今日もいいことがあるといいな。
線路を渡って長い城壁のような壁が続く。1時間ほど歩くと海に出た。リアス式の入り組んだ海岸線が続く。歩いていて気持ちがいい。後ろから来た巡礼者が写真を撮っている。
入り江に水の上に浮かんだような古い教会がある。このまま中世のドラマが始まってもおかしくない。長く歩いていると脳内物質が出て、いろんな空想が飛び交う!テンションがあがり足の痛みも消えてしまう。
そんな時、頭の上からロバがいきなり顔を出した。びっくりしたな!もう!この国は動物の放し飼いが珍しくないから困る。村の中に高床式でネズミ返しのある小屋が建っていた。その柱とネズミ返しが石なのには驚いた。こちらはやはり石の文化なのだ。
村の広場に生花の花びらで描いた美しい白鳥の絵があった。ここも何かのお祭りなのだろう。雨がしとしと降ってきた。村に屋根付き洗濯場があった。ここの湧き水で野菜を洗ったり洗濯をしたりするのだろう。愛媛の遍路道にもこんなところがあったのを思い出す。また海岸線に出た。道は高速道路の下をくぐる。支柱にサーカスのポスターが貼ってある。こちらの人はお祭りが大好きなのだ。
昼近く、お腹が減ってきたところでうまい具合に村のバルにたどり着いた。家族連れが食事をしている。今日は土曜日だからみんなビールやワインをたらふく飲んでいる。スペインで飲酒運転はどうなっているんだろう。まあぼくは歩きなのでいつでも遠慮なく飲めるが…。やっぱりお姉さん!生ビール!
調べたら、飲酒運転の検査の数値は日本よりもかなり緩い。アルコールに強い体質の人が多いというのもあるみたいだ。しかし、死亡事故もあって昔よりも厳しくなっているのは確かみたいだ。小さな村をいくつか通り抜けて。3時間あまり歩く。村の入り口のバルで顔見知りの巡礼者たちが楽しそうにビールを飲んでいる。

「アルベルゲはどこ?」
「もう少し行った左側だよ」「黄色の家だ!」
「ありがとう!」

5分も歩くと可愛い私営のアルベルゲがあった。
本日これまで!
オスピタレロは出かけていて留守だったが、空いているベッドを確保した。
後はシャワーを浴びて、晩飯食べに行くとするか。
旅がやっと日常になってきた。
今日も歩けている幸せ。ありがたいね。
後からきた若いのが知り合った女の子と盛んに携帯で話している。
たいへんだね!若いの!がんばれよ!

おじさんに雑念はない!ただ眠いだけ。

あしたのこころだ!

(つづく)

0 件のコメント:

コメントを投稿