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2020年1月15日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (17)


711028 棚橋正人
616日(金) リエンド (Liendo) ~ ノハ (Noja)    20

朝歩き出すと、村のどの家のドアノブにもビニール袋がぶら下がっている。よく見るとノブは人の手の形をしている。袋の形からすると、フランスパンのようだ。そういえば昨日、パンを配達するワゴン車をみかけた。なるほどこれだと村の人はパン屋に行かなくてもすむ。
 スペインにはパン配達がある。「金八先生」の時代に、家出をした中学生の女の子が早朝に配達された瓶の牛乳とパン屋の前に置かれた工場直送のパンの箱から中身を失敬して食いつないだ話をしてくれたのを思い出した。日本も少し前まではおおらかだったのだ。
 農村地帯の家は2階建てで大きい。屋根にはオレンジ色の瓦が載っている。草原の中に廃墟の教会があった。まるでジブリの世界だ。案内板には「サンジェルマンの礼拝堂」と書いてあった。
牧草地を抜けて再び海岸に出る。断崖から霧の出てきた海を見下ろす。石灰岩の岩山を越えて峠を上るとラレード(Laredo)の町が見えてきた

 町の方から小学生の一団がわいわい言いながら登ってくる。後ろには引率の先生がいっしょだ。スペインは6月になると遠足があると何かで読んだ。こっちは7月の初めから夏休みが始まる。9月からは新学年になるので、これが学年最後の行事だ。夏休みはたっぷり2か月ある。大人もバカンスをとるから、家族で長期の休みをとることができる。彼らはそのために、頑張って1年働くのだそうだ。

 町に入ると手押しの清掃車があった。それに手作りの箒が立てかけてあった。それがまさに「魔女の宅急便」のキキのほうきだった。形がなんともよかった。欲しいと思ったがしかたない。あきらめて先を急いだ。
 坂を下ると広い砂浜に出た。ここが「裸足で歩くに限る!」と聞いていた砂浜だ。砂は波に濡れたところの方が固くしまって歩きやすい。が、靴を履いたままだと、時々大きい波がきて濡れてしまう。だから、素足が一番! 第一気持ちがいい。ごみもなければガラスのかけらもない。それにいろんな人が砂浜を散歩しているので、それを見ているだけで退屈しない。
  湾曲した浜をショートカットしてプラプラ進む。写真を撮っていたら、散歩の人がニコニコしながら「撮ってあげるよ」と声をかけてくれた。「ブエンカミーノ!」「ありがとう!」みんな実にいい顔をしていらっしゃる。
砂浜の先端からサントーナに向けて渡し船が出る。乗り場に行くと車からテレビのクルーがバラバラとおりてきた。ディレクターが巡礼の取材をさせてくれと言ってきた。なんか態度がデカイな! でも、これもカミーノの宣伝になるならと「いいよ」と答えた。

 小さな渡し船が対岸からやってきた。砂に乗り上げるようにして止まると、船員が手すりの付いたブリッジを船から降ろす。ディレクターはカメラマンにローアングルで撮れと指示を出す。この間巡礼者は浜辺で待たされる。インタビューするのはタレントでやけに愛想がいい。奴は女性のサイクリストにばかりマイクを向けている。ご夫婦の巡礼者はタスマニアから来たという。テレビクルーも船に乗り込んでさらに撮影が続く。船は5分もすると桟橋に着いた。
船着き場には巡礼路を紹介するブースがあった。スタッフの女性がカミーノの缶バッジを配っていた。これも明日のフェスティバルの宣伝なのだろうな。

 町を通り抜けるとそこには高い塀にさえぎられた馬鹿でかい刑務所があった。
「プリズン211」というTVドラマがあったが、あれはスペインとフランスの合作だったから、ひょっとしてここか…?

また砂浜に出て、ずんずん歩いた。もう疲れたぞ!ノハのビーチのはずれに青いペンキで塗られた私営のアルベルゲがみつかった。本日これまで!

ごくろうさん!ごくろうさん!部屋にあがるとタスマニアのご夫婦もいた。シャワーを浴びて洗濯をしてシエスタ。隣が同じ経営者のレストランだったから、晩飯はそこですませた。食べ終わったらもう夕陽を見に行く気力もなくなっていた。ベッドに直行で爆睡!たぶんいびきをかいていると思う。どちらさんもごめんなさいよ!

もう明日のこころだ!

(つづく)

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