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2020年4月1日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (28)


711028 棚橋正人
 

お遍路定食7ユーロ(アビレス リベロ通り)

627日(火)  ヒホン(Gijon) ~ アビレス(Aviles)  25㎞

バケツをひっくり返したような豪雨で目が覚める。

ここはヒホンのキャンプ場のバンガロー。4つのベッドを独り占めなのだ。これには理由がある。昨日、受付で渡された小屋に行くと3人の巡礼者がいて、もう1つのベッドには荷物が置いてある。「ここに誰かいる?」と聞くとおじさんがいるとのこと。だめだこれはと思って広場を横切って受付までまた引き返す。受付で事情を話すと「そんなはずはないけど…」という。「でもそうなのだ」というと若いスタッフが確認に行ってくれた。どうも受付をせずにベッドを確保した人がいたようなのだ。結果、別のバンガローのカギをくれたので昨夜も一室独占のラッキーな夜だった。

ここは家族連れが多くて、昨日のプールは子どもたちの歓声であふれていた。その隣の大きい集会室には団体さんがいて、レインボーカラーの横断幕が掲げられていた。これはLGBTの権利の運動をする方々だった。こんな一角が巡礼者のためのアルベルゲというのも面白い。カトリックは同性婚についてどんな見解を持っているんだろうか?今度だれかに聞いてみよう。

このすごい雨に出て行っても濡れるだけなので、我慢して雨宿り。他の巡礼者も大半が待機している。少し小降りになったのでそろそろ出発!お遍路には傘という強い味方があるのですよ。ヨーロッパの方はなぜか傘を持たない。巡礼者はほとんどポンチョかカッパで傘をさしているのは見たことがない。
国道に出てバスを待つ。バスは二重連でやってきた。連結部はゴム製の蛇腹で出来ている。床も平坦なので行き来はスムーズにできる。定員は倍なのにワンマンカーなのだ。日本でもトレーラーの連結は見たことがあるがバスはすごい!
昨日も見た高い塔が見えてきた。教会のようだが新しくて少し雰囲気が違う。グーグルの地図で確認したらラボラール大学とあった。なんだ大学か!フェンスが物々しい感じだったので軍隊の施設かなと思った。
そういえばパリでは空港に着いたとたん自動小銃を抱えた完全武装の兵隊が目に付いた。メトロ(地下鉄)では数人の兵士がその格好のままで乗り込んできたからびっくりした。テロがあるから仕方がないのだろうが、日本は安全な国なのだと思う。そして、スペインはというとやはりお巡りさんしか見たことがない。そのかわりパンプローナでは労働者のデモを見た。いい国だよ、スペインは!

ヒホンの街の中心でバスを降りる。まだ雨が降っている。さて、どうするかバルで珈琲でも飲んでゆっくり考えよう。どんどん強くなった雨が少し小降りになる。道行く人をぼんやり眺める。人間観察がおもしろい。お散歩をしているのはお年寄りのご夫婦。さっき前を通った教会の鐘がうるさいくらいに大きな音で鳴る。その前に物乞いの人がいたので小銭を渡した。タンクトップの人がいるかと思えば、ジャケットの人もいる。髭の男性がやたら目に付く。若い女性は長い髪の人が多く、年配のご婦人は超ショートの人が多い。
さて、俺はどう見えているのだろう?スペインの港町のバルでボーッと座っている東洋人。つまり「カフェは哲学をするところ」なのだなぁー。人ごみの中の孤独。これがいい。

天気も悪いし、時間も10時を過ぎてしまったからバスで移動することにした。郊外に出るバスターミナルは昨日、案内所でもらった地図でわかる。ここから25キロ先のアビレスに向かう。バスは高速道路にのって工業地帯を走る。雨はやまない。牧場が見えたと思ったら案外早くアビレスの町に着いてしまった。
アビレスはこじんまりとしたいい街だ。まずアルベルゲの場所を確認。早かったが受付をしてくれたのでベッドを確保する。ベッド数80とあるから「北の道」では大きいアルベルゲだ。今日は街をブラブラ観光することにしよう。
アビレスは入り江に市街地があって製鉄を核に産業の中心として栄えた街だそうだ。市庁舎前の広場は気持ちがいい。やっと雨もあがったのでまずカフェの外の席で生ビールをグビリ!
歩かない日があってもいいじゃないか!今日は完全休養日としよう。

にぎやかな方に歩いていくとショッピングモールがあった。その前で路上ライブをやっている。ベースにトランペットにトロンボーン、それに女性ボーカル。プロっぽくないのがよかった。今日は平日なのになんでだろうね?スペインの学生は7月に入るとすぐ夏休みなのだそうだ。卒業式は6月にあるので、その連中はもう休みに入っている。バカンスシーズン先取りの空気なのかもしれない。
音楽を聞いたらなぜか急にハンバーガーが食べたくなった。マクドナルドはなかったがBurger Kingがあった。店に入るとやたらガキんちょが多い。参ったなぁー!でも、食いたい!我慢して急いでハンバーガーを喉に詰め込み、コーラで流し込んだ。

外に出るとまた雨だ。にぎやかな通りを迂回して旧市街を歩く。いいなぁー!雨に煙るスペインの街角。哀愁がしとしと降ってたまりませんなぁー。
三谷幸喜の『ザ・マジックアワー』の街並みが頭にうかぶ。
映画の舞台は港町、守加護(スカゴ)。妄想がふくらむ。ここで美女が登場すれば映画が撮れそうだ。

マジックアワーとは日没後の「太陽は沈み切っていながら、まだ辺りが残光に照らされているほんのわずかな、しかし最も美しい時間帯」

を指すそうで、三谷によれば「誰にでもある『人生で最も輝く瞬間』」をいう。

カミーノを歩いている自分は常に物語の主人公で、毎日が充実している。
夕方は寝ていることが多いが、夜明け前の太陽が昇る直前はとても美しい。
カミーノをなぜ歩くのかと問われれば、それが「人生で最も輝く瞬間」を与えてくれるからなのかもしれない。

ほろ酔い気分のお遍路は歩いてないので、今日はやたら元気!
そのままアルベルゲに直行!
明日は歩くぞ!がんばるぞ!
と心地よい眠りにおちるヤポンペレグリーノでありました。

来週につづく

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