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2020年4月15日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (30)

711028 棚橋正人
 

629日(木)サン・エステイバン・プラビア(San Esteban de Pravia) ~ ソト・デ・ルイニャ(Soto de Luina

港の駅は終着駅で、駅舎が食堂になっている。こんな駅が北海道にもあった。留萌本線の増毛駅である。高倉健さんの映画「駅」で使われた。同僚が北海道の採用試験に通って増毛の高校に赴任していた。夏休みに訪ねたら、どんぶり一杯のサクランボをごちそうしてくれて感激した。

ホームにでかい樫の木が生えていて「KIKO食堂」のプレートが打ち付けてある。アルミ製の椅子が並んでいる向こうで若い女性が一人列車を待っている。実に絵になるなぁー。

今日は山越えがあるから先を急ごう!民家の玄関に美しい聖母の陶板が飾られている。「コバドンガの聖母」というらしい。ムロスの広場で休憩していると清掃のおじさんがきびきび働いている。道を聞くと手を止めて親切に教えてくれた。ついでにおじさんは向かいのバルに行けという。なんで?と聞くと
「そこに行くとスタンプを押してくれるからぜひ行きなさい」
「カミーノは左に行くんだよ。バルは右ね」
はいはい!そこまで言われたら行かねばなるまい!巡礼は親切をいただいたら乗ってみるものですから。はたしてそのバルは「コパカバーナ」、スタンプだけというわけにもいかないからコーラを注文する。
店の女の子に「実は掃除のおじさんにぜひ行けと言われて来たよ」というと彼女は奥に向かって声を掛けた。身体と顔がまん丸のおばさんが出てきた。

「巡礼かい?ごくろうさん!ところであんたはどっから来たんだい?」
「後ろの世界地図のあんたの国のところにピンをさしておくれ」という。
言われるままに日本列島の大阪あたりにピンをさす。
「あんたはこの店初めてのハポン(日本人)だよ!遠いところからよくきたね」と歓迎していただく。女の子にカメラを渡しておばさんと記念写真を撮ってもらった。「良い巡礼を!ブエンカミーノ」「ありがとう!」一期一会これが愉しい!

このやりとりは掃除のおじさんを含めてみんなスペイン語。しゃべれませんよ、僕は。でもなんとなくわかるから不思議?
このスペインから帰って行った熊野古道の茶店のおばさんが言っていた。

「最初、外国人の巡礼が来たときはしゃべれないからどうしようと思ったけど、人間どうし通じるとわかったら怖くなくなったよ。あの人たちは日本語も勉強してるしね。マナーもいいし。いいお客さんだよ」

四国でいうところの「おせったい」の心ですな。巡礼者に対しての「畏敬の念」・いたわり・ホスピタリティーそういうものを持っている方とは言葉なしで通じるのですね。これが愉しい。これがなによりのご褒美です。






村はずれに巨木があってその後ろに「シュレック」に出てきたような石作りのお城が現れた。城門が木に覆われ咲き乱れる紫陽花が怪しい。ここには魔法使いが住んでいるに違いない。重そうな扉が少し開いている。「悪い奴なら成敗しなければならないが先を急ぐ巡礼旅、イケメンの王子様にその役目は譲ることにしよう」と。そんな妄想が膨らむ素敵なお城でした。こんなのに出会うのも旅の醍醐味であります。


ユーカリの林が続く。山道にさしかかると、どこからか大型の犬が現われた。白と黒のブチ。首輪はしていない。どうやら先に立って案内してくれているようなのだ。あまりに歩みの遅いお遍路を曲がり角で待っていてくれる。カミーノでは時々こんな先導犬が現われる。突然現れて突然消える。他のカミーノ仲間からも道案内犬の話はよく聞く。『白い犬とワルツを』の映画を思い出した。この白い犬は主人公の亡くなった最愛の奥さんだった。内容をよく覚えていないので、帰ったらTUTAYAに行こう!思ったとおり峠を下って村が見えたあたりで白黒の犬はフッと消えた。

ソト・デ・ルイニャのアルベルゲに着いた。古い学校か公民館のような堂々とした建物。中に入ると天井が高い。ベッドがズラリと並んでいる。途中で前後しながら歩いてきたスキンヘッドのアジア系のマッチョと髭の若いのは先に着いていた。奴らは若者なのに僕とペースがそんなに変わらない。明日で6月も終わる。このペースで大丈夫かな?日程を今一度、考えよう。

特別のことはなかったが、楽しい一日だった。
明日は何が待っていることやら。
シャワーでさっぱりしたら飯いこう!!

(つづく)

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