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2020年4月22日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (31)

711028 棚橋正人

630日(金) ソト・デ・ルイニャ(Soto de Luina)~ ルアルカ(Luarca) 40
                                                        

201965日の朝、フェイクニュースが流れた。…と思った。まさかと思った。が、昼のテレビで報道があった。どうやら本当らしい。夕方には記者会見が開かれた。
映画「フラガール」の蒼井優と南海キャンディーズの山ちゃんが結婚した。
翌日のインタビューを見て温かい気持ちになれた。
「真面目にやっていれば報われることがほんとにあるんだ」とは、山ちゃんの相方静ちゃんの言葉である。悲惨なニュースが続いているなかでホッコリする出来事だった。
「フラガール」は福島県いわき市に実在する常磐ハワイアンセンターが舞台。常磐炭鉱の閉山で仕事を奪われた人々が懸命に立ち上がっていく物語である。男たちはヤシの木を植え、娘たちは都会から来た指導者の元でフラダンスショーを習い完成させていく。ラストの蒼井優のフラダンスは圧巻だった。
だが、順調だったスパリゾートハワイアンズは2011311日の東北大震災で、建物に壊滅的な被害を受け休業することになる。が、この時ホームグラウンドを失くしたダンサーたちは全国に247回のキャラバンを行った。このショ―が評判を呼び、20122月にハワイアンズはみごとに復活する。炭鉱町には昔から「一山一家」という助け合いの精神が生きているという。震災からの復興もそこに暮らす人々の思いが全国の人々に受け止められたからだと思う。
そのニュースを見ていつか行きたいと思っていたハワイアンズに行ってきた。
ハワイアンズショーは見事だった。東北のハワイアンの本気度は間違いなく本物だった。冬の札幌の「雪まつり」の雪の舞台で本場のハワイアンショーを見たことがある。表現されているものに生命が宿っていた。それは光・風・花・木・喜び・悲しみ・愛・慈しみだった。福島と雪の札幌とハワイがつながった瞬間を見た思いだった。
 
さて、スペインに戻ろう。今日の計画は宿から「少し戻って村の銀行の前からバスに乗る」だった。行ったがそこはバス停ではなかった。さらに戻って村はずれまで行ったが、ない。人にも聞いてみるがみんな言うことが違う。仕方がないのでホタテ貝の矢印に従って歩くことにする。丘を上って高速道路のロータリーまで来た。ここにバス停があったのでバスを待っていると、道路の反対側にバスが止まったので乗り損ねた。なんだ、この展開!これは「自分の足で歩きなさい」ということか!そうにちがいないと思い返して歩くことにした。
2時間歩いてNovellanaという村にきた。もう昼になっている。バルがあったので入った。女将さんが脚立を引きずっている。壁の上の方に新しいメニューを張ろうとしている。見ているとなんだか危なっかしい。客は地元のお爺さんが二人。一緒の宿だった巡礼者はもうずっと先まで行ってるだろうな。バルの前にバス停はあるのだが、それがスクールバスの停留所なのか路線バスなのか見当がつかない。
脚立から降りた女将さんに「ルアルカまでバスで行きたいのだが、店の前のバス停にバスは止まりますか?」と聞いた。返事は「たぶん」不安そうな顔をしていると「ちょっと待ってて」と向かいの家まで走って聞きに行ってくれた。「大丈夫!1時20分に来る」こんな親切がうれしい。
 かくして、時間どおりバスは来た。ドライバーは細身で短髪の女性。山のくねくね道をボタンのエンジンブレーキとシフトダウンで減速する。高速への進入もスムーズで惚れ惚れする運転テクニックだった。
30分ほどで美しい港町が見えてきた。町の手前から一気に坂を下る。断崖から川筋に曲がりくねった傾斜の急な道が続く。ルアルカに到着。
 古くて風情があっていい町だ。表通りの店に活気がある。観光客もちょうどいい割合でなじんでいる。煙草屋のショーウインドウに水煙草の道具が飾ってあった。これはペルシアが発明した喫煙具だ。日本では見たことがない。高さが30センチから50センチくらい。煙が水の中をくぐるので暑い地方で好まれたそうだ。これもイスラムの文化なんだ。でもなんでここに?
 酒屋に緑のシードラの瓶が並んでいる。安いのは1.5ユーロ、200円しない。アルベルゲの看板が見つかった。なかに入ると受付には人がいない。ロビーできょろきょろしていると、東洋の青年が受付は向かいのホテルでしてくれると教えてくれた。さあ、シャワーを浴びてひと眠りしたら街に繰り出そう!


 
 岬に向かう道にレストランや土産物の店が並んでいる。飾り物の船がかわいい。河口の先に灯台がある。外海はけっこう荒れていて45mの白波がたっている。漁船やヨットが停泊する小さな港をぐるりと囲んで5階建ての街並みが絵になる。2階建ての壁に円盤があって中心から斜めに指金が埋め込んであった。よく見ると日時計だった。こんなのも初めて見た。
 お腹が減ってきたのでレストランをさがす。観光地にしては高くない。通りに面した店に座って注文をしたところで、東洋の方がふらりと入ってきた。ベストを着た白髪のその方は日本人だった。私よりも先輩のYさん。お互い日本語に飢えていたので同席することになった。途中、女性の道連れが出来たが足を痛めたので先に行ってもらったとおっしゃる。巡礼の後、サンティアゴ・デ・コンポステラ大学で2か月間スペイン語を勉強する予定だそうだ。うらやましい限り。スペイン語であじさいの花をオルテンシアというと教えていただいた。彼は小説家「檀一雄」のファンで、檀が晩年を過ごしたポルトガルで詠んだ、

   落日を 拾いにいかん 海のはて 

という句も教えていただいた。
今夜は楽しい!よく飲んだ!宿の門限が迫っている。おやすみなさい!


(つづく)

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