話し言葉が優位に立ち、書き言葉による伝承が希薄になっている現代において、読むこと書くことの大切さを説く一冊。
私たちは先人の遺した文字によって知恵を得てきた。一方でブログやSNSなどの普及により誰でも発信者、表現者になれる時代である。その時代に文字による遺産をうまく受け継ぎ、糧にしようとしていない現代の日本に筆者は危機感を覚えると言います。
では、どうすればよいか。筆者は、相手の行ったキーワードを押さえながら会話を続けることとか、先人の文章を引用することで先人と融合することを勧めています。また、本を読むとき、(同級生でもクラスでも)他人の読みを確認しながら読み込んでいくこと、五七五を作る実践のなかで日本語力を磨くことなど、いくつもの提言をしています。
「先人の遺した」というだけあって、なんと多くの先人が登場するか。松尾芭蕉、森鴎外、夏目漱石、中島敦、福沢諭吉、孔子、幸田露伴、額田王、大海人皇子、柿本人麻呂、賀茂真淵、本居宣長、稗田阿礼、太安万侶、紫式部、清少納言、折口信夫…まだページ数は全体の3分の1くらいですが、これだけの登場人物(疲れたのでもう書くのをやめます)。それぞれのエピソードを読んでいるだけでも楽しい。
話す、聞く能力偏重の世の中から、もう一度、読むこと書くことの大切さを見出す世の中に変えていくことが大切と一冊を締めくくっています。
改めて「帯」を眺めてみると次のように書かれているのに気づきました。「SNS時代、お困りのあなたに…齋藤孝が解決します」して、そのお困りとは、「コメントが書けない」「投稿がバズらない」「“いいね”をもらえない」キャッチコピーとしてはわかりやすいけど、この一冊で解決できるかな?そんなに単純なものではないように思いますが。
実は、授業の合間の小ネタがいっぱい詰まっている、国語教員にとっては、すぐ役立つオイシイ一冊だと思って、ここに載せました。
(hill)
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