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2020年5月13日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (34)


711028 棚橋正人

7月3日(月)リバデオ (Ribadeo) ~ ゴンダン (Gondan)    20㎞                                                        

7月3日は双子の娘たちの誕生日。なんとしても日本にメールを送らねばならない。日本を発ってはやひと月と2日が過ぎた。父ちゃんは適当に手を抜きながら今日も元気に歩いているよ。送り出してくれた奥様には感謝感激雨あられ!合わせて感謝を申し上げる。

さて、夜明けに宿を出る。街灯がまだついている。誰もいない町のメインストリートを三菱パジェロのパトカーが巡回している。モホンに残りの距離数が出るようになった。コンポステーラまであと187㎞。今日は標高300mの峠を越えなければならない。牧場の草原が続き行く手には低い山々が連なっている。
Vilelaの標識がある。ここまで2時間。まだ6キロしか進んでいない。
小さな村を縫うように道は続く。途中で石の壁と石の屋根で出来た古民家の補修をしていた。伝統的な建物は修理費用の補助が出ると聞いたが、どれくらいの割合なのだろう。その先に古民家や穀物蔵(オレオ)のミニチュアを庭に飾っている家があった。新しいものだけをよしとせず、伝統や文化を大切にするのは素晴らしいことだと思う。
コンポステーラまであと179㎞のモホンがあった。ユーカリの林の中でマウンテンバイクの一団に追い越される。ちょうど道端に座り込んで休憩中だったので飛び上がらずにすんだ。なぜかというと奴らは音もなく近づいてくる。追い越しざまに後ろから「オラー!」と声をかける。こちらの視野には入っておらず突然なので、飛び上がらんばかりに驚くわけだ。わざととは思わないが何か方法はないのか?心臓に悪いぜ!
みんな片手を挙げて挨拶してくれる。「ブエンカミーノ!」歩きも自転車も雨には濡れて風には難儀する。のぼりに苦しみよく腹がすく仲間なのだ。
ただし、むこうは朝ゆっくり出発して1日100以上キロ進む。コンポステーラで巡礼証明書を発行してもらうには、100キロ以上巡礼路を歩かなければならない。が、自転車では200キロなのだ。これは2日の距離でしかない。僕はもっと差をつけるべきだと思う。だが、自転車遍路もとても魅力がある。チャンスがあれば一度やってみたいものだ。

草原の丘をダラダラ歩く。一休みしたいがバルも食堂(タベルナ)もない。進行方向から巨大トラクターが現われる。後ろから延ばしたアームの先に草刈り機が付いていて、道路わきの草を刈っていく。巡礼者の1人が「北の道」でモホンが草に隠れていて道を間違えたと言っていた。四国でも地元の有志が遍路道を維持するために「草刈り」や道の補修をしてくださっているところが多くある。ここは歩く人の数の違いもあって「フランス人の道」ほど至れり尽くせりではない。商売になるほど巡礼者が通らないことの不便さもあれば、いいところもきっとあるのだ。

3時ごろゴンダン(Gondan)のアルベルゲに到着。例によってカギは開いているが無人。
リビングのテーブルに紫陽花の大輪が活けてある。小さな村なので食堂も食料品を売る店もない。寝室は二階でベッドは二段ベッド。さて、どうする?
次の宿までは8キロ2時間の道のり。だが、もう歩きたくない。手持ちの食料はあるしIHヒーターは使えるから本日、ここまで!!
独り占めのアルベルゲでシャワーを浴びる。

シエスタをして下に降りると巡礼者がいた。ご夫婦らしい。進むかどうかやっぱり迷っている。「庭もあって眺めもいいから泊まろう、晩御飯はビスケットでいいよ」と奥様。30代後半くらいのカップル。奥さんはとても元気な方。目の色がブルーで透き通っている。「わたしは宇宙人なのよ」ってふざけてばかり。
仲良きことは良きことなり。微笑ましいお2人はベルギー人。ベルギー人は「ベルジャン」というのだと教えてもらった。公用語はフランス語かオランダ語。2人は英語とドイツ語とスペイン語まで話す。すごいな!うらやましい限りだ。
前の宿で、多すぎるインスタントのパックをもらってくれと頼まれたのがあった。それで3人分のミルクコーヒーを作ってテーブルに置いた。そこに一人旅の大男が入ってきて合流する。彼もベルジャン、名前はマルクだった。
 台所の棚に旅人が置いていったパスタがあったので、手持ちのサラミと缶詰で料理を作った。食べきれないほどできたので、マルクにおすそ分けしたら喜んで食べてくれた。
 ご夫婦はカルラとデルク。デルクは旅慣れた奴で、宿のオスピタレロ(管理人)に携帯で電話をして、宿代の徴収に来るときにワインを1本持ってきてくれと頼んでいる。陽が暮れるころに女性の管理人が車でやってきてスタンプを押してくれた。そしてデルクが「ワインを飲もう!」とみんなを誘う。いい夜だった。なぜかまた漢字を書いてくれという話になり、みんなの名前を漢字で書いてあげた。

 この二人とはその後、何度も出会うことを、その時の僕はまだ知らない。
 気持ちよく酔っぱらったぞ!
 もう寝る!明日のこころだー!

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