このブログを検索

2020年5月20日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (35)

711028 棚橋正人
 
                                     
74日(火)ゴンダン(Gondan)~ モンドネド(Mondonedo)15km




雲が低くたれこめて天気が悪い。外はまだ暗いが一番に起きて、さぁー行くぞ!コンポステラまであと167㎞。ここらのモホン(道標)は新しい。牧草地の中の道を一時間ほど歩いたらLourenza(ローレンツァ)の村に着いた。
なんだ!こんなに近かったのか!


これもめぐり合わせ。道沿いのアルベルゲをのぞくと、昨日ゴンダン(Gondanの宿に立ち寄った長身の美しい女の子がいた。休憩がてら話してみると、彼女はなんとロシア人。3日前は中国雲南省の青年だった。なんとなく中国とロシアには親近感がわく。カトリックではない彼女がなんでカミーノに?と疑問に思って聞いてみた。すると彼女は現在美術の勉強のためにイタリアの大学に留学しているそうだ。なるほど、するとスペイン巡礼は留学先からの夏休み旅行というわけだ。60代のおじさんが歩いてもこんなにワクワクする旅なのだから、20代の若者が歩けば受け取るものは何倍も大きいはずだ。いいことだ!うれしくなったおじさんは、昨日折った折り鶴を彼女にプレゼントした。彼女はとても喜んでくれた。こんななんでもない出会いがカミーノの醍醐味なのだとおじさんはしみじみ思うのだ。

高原から見下ろす村々はすべて雲の中。白い牛がのんびりと草を食べている。濃い霧の中に巨大な送電線の鉄塔がそびえたっている。またモホンがあった。「あと162㎞」なんだ、まだ5キロしか歩いていない。そろそろ腹がへったと思ったら次の村に着いた。
バルに向かうと先ほどのロシア人の女の子と顔見知りの若者がいたので仲間に入れてもらう。それにしてもどこで追い抜かれたのだろう?女の子の名前はオリガで若者はポルトガル人のフィリップだ。フィリップはポルトガル語が日本に伝わっていることをよく知っていた。カッパもバッテラもポルトガル語なのだと彼が教えてくれた。

村を出てユーカリの林にさしかかると、巨大トラックが切り出した材木を積み込んでいる。トラック後部にクレーンが付いていて鉄の爪で丸太を器用に挟んで荷台に載せていく。しばらく見とれていたが、遍路は先を急がねばならない。土の道が続く。標識があった。Mondonedo(モンドネド)まで「あと3.8㎞」峠から町が見下ろせる。なにやら古色なたたずまいがいい。これは期待してよさそうだぞ。
すっかり天気は回復。山間の古い町だが規模が違う。聖堂は大きくて立派である。珍しく拝観料を払ってカテドラルに入った。期待どおり「北の道」で一番の教会だった。それもそのはずで、ここ「モンドネド大聖堂」は世界遺産だった。資料によるとイギリスの「セントポール大聖堂」がカトリックでなくなる16世紀に運ばれた遺物もあるらしい。建築は古いものが13世紀に建てられている。ロマネスクからゴシック・バロックの建築様式まで見られるそうだ。きれいなステンドグラスは18世紀のものだとか。とても見応えがあったのに見学者は私以外一組だけだった。サンティアゴから160㎞しか離れていないのに、これはもったいない。だが、これも「北の道」を歩いたからのご褒美なのでしょうね。モンドネド大聖堂を独り占めさせていただき至福の時でありました。

付属の博物館にはカトリックの儀式に使用する聖杯や十字架が多数展示してあった。なかでもよかったのは素朴なマリア像や母子像だった。これらは村の小さな教会に祭られていたものらしい。四国の遍路道にあるお地蔵さんに、これは作った人のお母さんかと思われるものが時々ある。ここのマリア様のお顔もたいへんよく似ている。市井の人々の思いは「洋の東西を問わず」なのだといたく感心する遍路でありました。

 アルベルゲは郷土資料館の隣のきれいな建物だった。ドアは開いていたが、やはりここも無人。巡礼者も他に2組だけ。先ほどバルにたくさんいた若い連中はどこへ行ってしまったんだろう。スペイン人もいたからいろんな情報を持っているんだろうな…。本日これまで!ザックを降ろしてシャワーを浴びる。

 シエスタから目覚めた夕方、制服の屈強なポリスマンがやってきた。
 「悪いことはしておりません!敬虔な巡礼者でございます」
 「日本人の元教師 公共施設への不法侵入で逮捕!」の記事が目に浮かぶ!
 「はい!みんなパスポートを出して!」
 「宿代は6ユーロだよ!」

なんだ!彼はアルベルゲの管理人だった。にこやかに料金を徴収してクレデンシャルにスタンプを押してくれた。アルベルゲは公共の建物の場合が多いから市の職員がいるというのはわかるが…。まあ巡礼者はよそ者には違いないから、ポリスがパトロールのついでに寄るというのはいいのかもしれない。西部劇の保安官みたいなものだ。彼は感じのいいタフガイで「写真をいっしょにいいか?」と聞くと、笑って応じてくれた。

 町を散歩していたら中学生くらいの女子3人に話しかけられた。今日は初めての経験が続く日だな。なんでもペレグリーノに取材するという夏休みの宿題があるそうだ。
「どこから来ましたか?」「旅の目的は?」などいくつか質問された。可愛いセニョリータたちだった。この町はなんとなく奈良を思い出させる古都の佇まいで、たいへん気に入った。
 レストランでMenu del Peregrinos(メヌー・デル・ペレグリーノス)、お遍路さん定食を食べる。野菜サラダが胃袋にしみる!ワインも美味!

 今日もしあわせ!明日のこころだー!!

0 件のコメント:

コメントを投稿