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2019年11月20日水曜日

2017年 スペイン巡礼 北の道 (9)


711028 棚橋正人
6月8日(木) デバ(Deba)~ マルキナ=シェメイン(Markina-Xemein)  25

これを書いているのは2019420日。あんなに見事に咲き誇っていた桜もすっかり散ってしまい、テレビでは東北の桜満開のニュースをやっている。平成が終わっても安倍政権は続くわけで、大阪維新の一人勝ちも終わらない。市民・国民はそれにふさわしい代表を選ぶというが、賢明さ・品格・文化の成熟の度合いは50年前と比べてどうなのだろうか?
先週から、40年ぶりの定時制高校に行っている。ずいぶんと様変わりしていて以前の荒れた雰囲気はない。中学校で不登校だった子もいるそうだ。ここもまたおとなしい物言わぬ羊のような子が増えている。その昔、定時制に勤めていたころの教え子が先生になって長年勤めている学校で講師が足りないからと頼まれた。 

関西空港の対岸にあるその町の駅は外国語であふれていた。格安航空の遅い便で到着したアジアの人たちを泊めるホテルがいっぱいできている。ここ何年かで大阪も変わったなと思う。受け持ちのクラスにカタカナの名前が2人。フィリピンから来たという男の子は夜間中学校から進学したのだそうだ。観光で短期滞在する人もいれば、技能実習生という名の労働者も大勢いる。これからの日本は海の向こうからやってきた人々と共に生きていく社会になる。どうやってうまく付き合っていくのかを考えずにはいられない現実がもうきている。

さて、68日はデバ駅のアルベルゲで目覚めた。今夜の宿までは海を離れて、遠くに見える山を越えて行かなければならない。途中にはバルも食堂も店もない。
道はずっと上り。牧場の中をひたすら歩く。天気は快晴!馬がいたり、牛がいたりでのんびりと歩く。農家の柵の中にはアヒルもいるし、鶏はもちろんウサギまで跳ね回っている。実にのどかである。白い兎は食べるのではないだろうしペットなのかなぁ……。
農家民宿のような建物から女性の2人連れが出てきた。なぁーんだ!初日の宿で一緒だったドイツ人のふたりだ。朝ご飯をゆっくり食べてこれから出発するみたいだ。「オラー!」「グーテンモルゲン!」名前はソニャさんとバリンさん。バリンさんは長身で足の長さが違う。彼女たちの速いペースにはとても付いていけないので、先に行ってとお願いする。旅はマイペースが一番なのだ。
今日の予定は25キロ先のマルキナ=シェメインまで。牧場の中を鉄条網に沿って歩く。農家の家の前で三毛の犬が迎えてくれた。その後ろで弱そうな犬が1匹ワンワン吠えてうるさい。巡礼者が通るたびに吠え掛かるので奴は鎖に繋がれている。放し飼いされている犬の中には獰猛に向かってくる奴もいるから、そんな時のために杖は必要なのだ!牛飼いのおじさんはたいてい杖をもっている。だから杖を振り上げるとだいたいの犬はおとなしくなる。

道は森林地帯に入る。切り株に黄色いカミーノ矢印が釘で打ち付けてある。これは珍しい。道端に切り出した丸太がうず高く積まれている。背後から低いエンジン音と地響きが聞こえてきた。振り返ると木材を満載したメルセデスの巨大トラックがこちらに向かってくる。道は舗装されていないから土煙をもうもうと巻き上げている。このままでは道幅いっぱいのトラックにひかれてしまうじゃないか!回避場所をもとめて小走りに進む。やっと山側に少し広がった場所を見つけてやり過ごす。危ないところだった。土煙が収まるまで小休止。
 
   さらに進むと今度は「NISSAN」のオフロード車が止まっていた。こんなスペインの山の中で日本車に会うとなぜかうれしい!「お前偉いなぁー!がんばってるなー!」と思わず褒めてあげたくなる。

やっと峠を下ると小さな六角形の教会のような建物があった(サン・ミゲル教会)。中に入ると巨石が三つ支えあうようにして立っている。「なんだ、これは?」紫色のライティングがしてある不思議な空間だった。説明板はスペイン語なのでなんだかわからない。帰って調べてみるとこれは大天使ミカエルと関係があるらしい。スペイン語で「サンミゲル デ アレクチナガ」岩の下に大天使サン・ミゲルの写真もあった。なんでも結婚して1年目の若い男性はこの岩の下を3回くぐらなければならないらしい。悪さをしている男子にはどんな罰がくだされるのだろう?

いっぱい歩いて、マルキナ=シェメインの町に入る。アルベルゲで受付をすませて寝床を確保。シャワーと洗濯のあと外に出てみると、宿の前の芝生でウクレレを弾いている女の子がいた。話しかけるとカナダからの巡礼者だった。
「まだ、あんまりうまくないから練習しているの」 
「歩いているといろんなイメージが浮かぶから、曲ができればいいなと思う」
「素敵ですね」というと
ジブリの曲を演奏してくれた。こんな出会いはカミーノだからこそなのだ。

 歩いているとなぜか楽器がほしくなる。四国遍路で津軽三味線の演奏を奉納している若者に会った。神仏に演奏や踊り・歌を奉納するのは珍しいことではないと納経所の女性に教えてもらった。そうなのだ!と納得した。

 夕食を食べに行ったレストランのウエイトレスは英語がまるでだめだった。注文に困っているとたいてい知らない巡礼者が横から助け舟を出してくれる。ありがたいですね。何とかデザートのアイスクリームまでたどり着いて二人でニッコリとほほえむ。このときもバックから折り紙を出して鶴を折ってプレゼントする。ここはワインがボトルで出てきたが、とても飲みきれないので半分ほど残して店を出る。
今日も一日歩けました!あとは寝るだけ!このシンプルライフが最高に幸せなのだ!
明日はなにが待っていることやら…。

ベッドに潜り込んでクガァー!!おやすみー!

(つづく)

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