天理図書館 開館89周年記念展
奈良町 江戸時代の「観光都市」を巡る
2019年10月19日(土)~11月10日(日)
天理大学の卒業生である同僚が、こんな展覧会がある、一緒に行かないかと誘ってくれたのは3年前。記念展は、「御伽草子 -奈良絵本・絵巻を中心に-」でした。その会の記念講演に加え、肥後琵琶奏者の琵琶語りも聞かせてもらいました。2017年の記念展は、「夏目漱石-生誕百五十年を記念して-」記念講演「新聞小説家・夏目漱石の誤算」。昨年は、「小泉八雲 ラフカディオ・ハーン」という記念展で、講演が「小泉八雲-開かれた精神の航跡を辿る-」でした。
毎年この時期に開かれる開館記念展に寄せてもらっています。もとより向学心とか勉学という言葉とあまり相性の良くない私のこと、展覧会に行ったり講演を聞いたりしたところで、ほとんど何も残ってはいないのですが、それでも「行った、聞いた」というだけでも、ぼんやり過ごしているよりはマシかと思っています。
江戸時代の奈良町は、巡礼地でもあり観光地でもあったそうな。そのきっかけとして大きなものが、
大仏の再興と大仏殿の再興だったと。元禄5年(1692年)に開眼供養、大仏殿は宝永6年(1709年)に落慶しているそうですから、元禄以降に全国の人たちが、「そうだ
奈良、行こう」と思ったわけですね。「南都名所之絵図」「南都名所絵図」「ならめいしょゑづ」「奈良名所之図」似たようなネーミングの図が、時代ごとに多数発行されているのが展示されています。
展示室の入ったところにあった、奈良町絵図十二折本(1704~1715頃)はかなり精巧に作られた地図で、今とかなり似ています。通りの一本一本を確認している私がいました。
記念講演
「文化資源活用のパイオニア-江戸時代の奈良-」
天理大学教授の幡鎌一弘先生
その時はふむふむと聞いていたものの、1週間もたった今、記憶は思っている以上に風化しているので、アテにはならないのですが…
奈良では、奈良晒や酒造が主要産業でありました。17世紀になると、他の産地の台頭により、奈良晒や酒造は斜陽化してくる。晒であれば越後や能登、近江、酒造なら灘に押されてくるのです。旅の大衆化もあいまって、その空白に入り込んだのが観光業であり、奈良にも多くの旅行者が訪れるようになる。奈良町にも多くの旅館ができたらしい。
水戸藩の彰考館による「大日本史」のための調査の必要性から、東大寺等の大寺院の監視のために置かれた奈良奉行が、それまで表には出なかった寺院の史料を調査することになる。寺社の保存と、観光資源としての活用が生まれてきたというわけです。具体的には人々の旅を誘う出版物がたくさん発行されてきたということ。
この時代の多くの地図を見ると、当時の奈良の様子がよくわかるし、比較してみると細かな違いが見えてきて、時代の変化がわかるというお話でした。頼りない記憶ですが、こんなところでしょうか(アテにはなりませんよ)。
南都名所之絵図【元禄5(1692)年頃刊】 は、天理図書館のサイトの「名品紹介」で見られます。この、元禄5年の時点では東大寺大仏殿は仮設のもので、今のような大仏殿はなかったということが絵図から確認できます。
記念展が開催される時期は、天理図書館のあたりはイチョウが色づき始めるころで、歴史ある図書館の建物や1号棟などが趣深い景色を作ります。わが母校は歴史の浅い大学ですから、羨ましい景色でもあります。
来年の開館90周年記念展は、どんなテーマになるのでしょう。
(hill)
0 件のコメント:
コメントを投稿